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中国ビジネス形態


2023/03/28

REPORT

日本市場は少子化などの原因で縮小し需要が今後減っていくと予測されている中、海外へ進出し、特に巨大な中国市場を狙いにいきたい企業は少なくありません。ただし、たくさんビジネス形態がある中最初は何をチャレンジすれば成功に繋がるのかが分からないという企業が多いのも現実です。今回のレポートは中国向け商品を販売する際のビジネス形態を徹底解説します。日本企業が中国人に自社商品を販売する方法は次3つあります。インバウンド販売、越境EC及び一般貿易です。以下詳しく紹介させていただきます。

1.インバウンド販売

インバウンド販売とは、日本国内の小売店で、中国からの訪日旅行客へ商品を販売することを指します。また、海外商品をユーザーの代わりに購入し、購入手数料を上乗せして販売することで利益を得るという「代理購入者」は中国国内に数万人が存在し、ソーシャルバイヤーとも呼ばれています。

新型コロナウイルス変異株の影響で、海外渡航に対する制限が続いており、そのため、現在インバウンド販売が冷え込んでいます。日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2021年の訪日外国人観光客数は24万5,900人で、大きく落ち込んだ2020年比からさらに94%減となりました。コロナ前の2019年は3,000万人を超える外国人旅行者が訪日し、その中中国は国別レベルで人数が最多であり、まさに中国人観光客に依存していたといっても過言ではないインバウンド市場でした。インバウンド需要はコロナ禍で大打撃を受けたビジネスモデルですが、日本企業が大きな投資をすることなく訪日する中国人消費者に自社商品を販売できる面では大いに期待されます。

訪日外客数と伸び率の推移

インバウンド販売を始めるには、以下3点準備が必要かと思います。

  1. 中国人消費者の認知度と評価を高めておくことです。ソーシャルバイヤーはユーザー数の多い人気商品を好んでインターネットで紹介や情報発信をします。 SNS等で個人客の要望に応じて、化粧品や美容雑貨、食品など日本のブランド商品を店頭で購入します。そのため、消費者の認知度と評価を高めておくことが大切です。
  2. ソーシャルバイヤーが仕入れに利用する店舗へ出品することが大切です。転売事業なので、ソーシャルバイヤーが免税サービスを受けられる百貨店、家電量販店、ドラッグストアを仕入れで使うが一般的です。また、商品を大量仕入れことによって、仕入れ先から一般販売価格より安い優待価格を提供されるソーシャルバイヤーも多いでしょう。天猫やタオバオなどにソーシャルバイヤーが日本で調達した商品が多数出品されていますが、同じ商品でも正規ルートで中国に輸入されたものよりも安く売られているケースも多く見られます。
  3. 中国語対応カスタマーサービスの設置も必要です。ソーシャルバイヤーからの問い合わせに対応できる体制づくりが必要になってきます。

ソーシャルバイヤーによる大量購入が「爆買い」という流行語にもなり、世界で話題になった時代もありましたが、脱税と管理の難しさで中国政府を悩ます大きな社会問題となりました。2018年11月よりECプラットフォーム上転売をするソーシャルバイヤーは、「電子商務経営者」という資格が求められると同時に、納税対象に定められたことで大量買いは一気に冷え込みました。そして、個人が海外製品を中国国内に大量持ち込んで販売することに対し厳しい罰則が適用されるため、昨今販売チャネルとしてソーシャルバイヤーを使うことに日本のブランド側のコストメリットが少なくなっています。しかし、日本製品を積極的に中国に紹介しようとしているソーシャルバイヤーが多く存在し、日々SNS上中国ではまだ知られていない日本商品を積極的に発信続けていますので、ソーシャルバイヤーは現在商品PRやブランド認知度を育てるマーケティング部分においては無視できないビジネスモデルとなっています。

2.越境EC販売

越境EC販売とは、ECモール・プラットフォームなどを利用し日本から海外に向けて商品を販売する(電子商取引)のことを指します。中国にいる消費者が日本のECサイトもしくは中国越境ECサイトで商品を購入すると、日本(直送モデル)もしくは、中国保税倉庫(保税区モデル)からエンドユーザーの手元まで配送されます。

越境EC販売

コロナ禍でインバウンドビジネスが急速に冷え込むと、中国を中心に越境ECの世界の市場規模は急激な成長を遂げました。経済産業省の調査報告によると、2020年中国越境EC市場規模(中国消費者が日米から商品購入総額)は4兆2,617億円でした。

越境EC販売には、以下の4つのビジネスモデルがあります。

直送モデル①

ECプラットフォームでオーダーを受け、EMSを利用し直接購入者に配送する方式です。越境配送にEMSは最も一般的で利用数も多い発送手段です。しかしながら、抜け打ち検査で関税が発生した場合実際支払われないケースが多く、商品返送が多発したり、消費者に身分証明書提示が必要ないため、B2C配送で活用するのはグレーなビジネスモデルとなります。

直送モデル②

ECプラットフォーム経由で注文が入り、関税先払いの行郵通関で商品配送を行う方式です。現在行郵通関発送対応可能なキャリアが増えており、EMSよりも安価で越境配送を行う事が可能になってきました。しかしながら、消費者は商品購入時に身分証明書提示が義務付けられていたり、行郵税の金額が確定するまでに時間を要したりとEMS発送に比べると手続きが煩雑というデメリットもあります

直送モデル③

ECプラットフォームで注文が入り、EC総合通関で商品配送を行う方式です。こちらも行郵通関と同じ関税先払いとなっていますが、行郵通関よりも税率が低いため、商品発送を行うブランド側に最も大きなメリットがあり、越境ECと言えばこちらのモデルとも言えます。しかし、EC総合税通関を使用するには、中国税関へ企業登録やシステム連携、アリペイなど中国決済システムで決済を行わなければならない等自社のみで進むには高いハードルが存在します。

保税区モデル④

EC総合税通関方式中国政府が許可されている商品のみ取扱可能となります。商品を中国にある保税倉庫に輸送・仮置きして、注文が発生すると保税倉庫から消費者に向け配送するため、輸送コストを抑えられますが、逆の保税区に商品を一定数在庫させなければならないため、在庫リスクを抱えることとなります。

また、日本でECサイトを構築し中国向け越境ビジネスを始めたいという企業も数多くありますが、中国ではインターネット上規制が数多く存在しているため、中国のユーザーが日本のECサイトへアクセスできない可能性があります。解決策として中国国内にサーバーを保有している越境ECプラットフォームへ出店も考えられますが、中国のサーバーを使用してECショップを運営する場合、現地法人から電信管理機構または国務院の情報産業主管部門まで、ICP(Internet Contents Provider)ライセンスを事前に取得する必要があります。このライセンスの取得はハードルが非常に高いため、天猫国際やJD国際などの大手中国ECプラットフォームで商品を販売するのが今では一般的なこととなりました。

しかし、越境ECプラットフォームでは、人気高いブランド商品がすでに数多く出店されており、売上を伸ばすための広告合戦が行われています。中国進出初期段階の企業は、認知度を高めるため人気ブランドを上回る多額の広告投資が必要となっています。そのため、中国市場へ新規参入したブランドで初期投資を抑えたい企業には向かないビジネスモデルと言えます。

3.一般貿易販売について

一般貿易とは、輸入ライセンスを持っている企業が輸入関税・輸入増値税を払って、商品を中国国内に流通させていく貿易形態です。下記中国向けの一般貿易と、保税区越境ECの違いを分かりやすくまとめさせていただきました。

一般貿易と保税区越境ECの違い

上記の通り一般貿易と越境ECは税制や輸入規制が大きく異なります。一般貿易で商品展開できれば、越境ECのみ限らず巨大なユーザー基盤を持つ中国国内ECをはじめ、あらゆる中国国内のチャネルに商品が展開できます。爆売りブランドとしてビジネス規模を拡大するためには、最終段階に入ります。以下で一般貿易の輸入制限を一部紹介させていただきます。

  • 中国は3.11東日本大震災のあと放射能汚染リスクを回避するという目的で、日本10都県(福島、栃木、群馬、茨城、千葉、宮城、新潟、長野、埼玉、東京)の食品・農産品(新潟県産米を除く)に対して、輸入規制をするとともに、日本の行政機関が発行する原産地証明書の提出が求められます。また、10都県以外の地域から輸出されたすべての食品・飼料等に対しても放射性物質検査を行っています。
  • 化粧品業界おいては、 商品の生産者および代理人が、中国国家食品薬品監督管理総局(CFDA)から輸入化粧品衛生許可証明書の取得が義務となります。証明書を取得するには、成分検査から効果テストまで工程が数多くあるので、通常は半年以上かかります。
  • 健康食品業界においては、食品として中国へ輸入可能であると同時に、中国国家食品薬品監督管理総局(CFDA)から保健食品輸入許可の取得が義務となります。製造に使われている原料が中国では見られてないものが含んでいる場合、新しく登録するのに費用と時間が必要となります。
  • 電気製品業界においては、商品に応じて中国の強制製品認証(China Compulsory Certification: 以下「CCC認証」)の取得が必要な状況があります。これは、中国で最も広く知られている製品安全性証明書であり、取得時間は最短3ヶ月かかります。
規制対象・内容

一般貿易を行う・コントロールをするためには、輸入ライセンスを持つ現地法人が必要となります。ただし、中国の総代理店が輸入ライセンスを所有していれば、現地法人を開設していなくても一般貿易を展開することができます。一般貿易はビジネス規模が非常に大きいですが、現地法人または輸入ライセンスを持つ総代理店の存在や前述のような輸入制限をクリアしなければならないハードルが数多く存在しています。。

その中で、商品が大量販売に適しているかを検証することが最も重要となります。関税、そして物流費用の関係上、中国販売価格は日本販売価格より1.5倍~2倍ぐらいの価格で販売しなければ利益を確保できません。日本の販売価格より高く販売しても、類似商品と比べて圧倒的な品質や差別化ポイントがあれば問題なく中国で爆売りする可能性はあります。

激しい競争に勝ち残り、さらに一般貿易から中国現地生産へ転換し中国国内トップシェアを狙えるブランドへ成長させることが一般貿易とその延長にある成長シナリオと言えます。

中国ビジネス3つのモデル、インバウンド販売、越境EC販売、一般貿易販売を見てきました。新規で中国市場に参入する場合、まずどの領域で勝負するかを見極める必要があります。コロナ禍の現在、越境ECに新規参入を検討する場合、当該レポートに示したような過剰な広告合戦を避けて、より戦いやすいプラットフォームを選択することも重要な視点になります。3つのビジネス形態のどれでも可能な商品の場合、インバウンドまたは越境ECの段階で一定の成功を収めてから、一般貿易ビジネスに展開することが望ましいです。

船井総研ロジでは、 お客様の目指す中国越境ビジネスの構築にむけて、商品特性を考慮した戦略を定めマーケティングとロジスティクスの両面から支援し、最適マーケティングと物流体制の構築を提案していきます。中国越境ビジネスに参画しようとしている企業様とのビジネスモデルのディスカッションを楽しみにしています。ぜひお気軽にお問合せください。

今後も中国越境物流の事情や、中国越境EC市場の動向を常に研究し、中国越境ビジネスで展開すべき具体的なマーケティング戦略について定期的にレポート配信を続けて参ります。

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船井総研ロジの越境ビジネス

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